4泊5日で滞在したベトナム・ホーチミン、驚くことが多い街でした。バイクの多さとマナーの悪さにはびっくりです。歩道を走る、歩行者専用の横断歩道を青信号で渡っている前後すれすれを横切る、左折と対向右折が無秩序に入り乱れる、あちこちでクラクションが鳴り響く、といった具合、車のマナーも似たようなものです。それに、どこへ行ってもたくさんのバイクが走っており、排気ガスが気になります。
歩道では、料理して食事している、商品を満載した天秤棒を担いで来て商売をしている、公園では通路に直接座り込んでみんなで話し込んでいる、市場では狭い通路に商品が迫り呼び込みも激しい、街歩きを楽しむという気分にはなれません。この無秩序や活力を楽しむのであれば別ですが。ベトナムでこうですから、東南アジアのもっと貧しい国々では更に驚かされるに違いありません。
空港と市内を結ぶバスが25円、と聞き嬉しくなってベトナムへ出かけました。結果、物価の安さと食事の美味しさにはほぼ満足でした。タクシーは初乗60円から市内ならばかなり遠くでもせいぜい250円、レストランはビールが100円、スイカジュースが150円、牛肉のフォー330円やカニの爪のフライ1,150円と嬉しい価格、飲まず食わずでひたすら歩き回る我々のいつもの観光とはまるで違いました。雨期なので雨合羽などを持参しましたがスコールに出会うことも無く、最高気温も31℃、32℃で、旅行中東京では36.7℃になる日もあり、日によっては東京よりも涼しく、天候にも恵まれています。
ツアーや観劇も安く、マングローブなどが迫る狭い水路を小さな手漕ぎボートで進むメコン川クルーズ、ベトナムの神話と伝説を題材にした数々の巨大像があるテーマパーク、竹製小道具を使ったアクロバットパフォーマンス、歌とベトナム楽器に合わせての水上人形劇など、エンターテイメントにも毎日出かけています。いずれもベトナムに行かないと楽しめないものばかりです。
観光地であればどこにでもある絵葉書がほとんど見当たりません。やっとのことで見つけたのは、お婆さんが歩道で売っているものでした。フランス植民地時代の大聖堂や郵便局の建物が少しあるものの、多くは農村風景の絵葉書です。ホーチミンには観光すべきところはほとんどない、ということなのでしょう。あるのは”安さ”、でも雑貨や衣料に興味のない私にとっては、また行こう、というほどの魅力はありません。
ぼったくり、ひったくり、スリなどが日常茶飯事のようで、空港からホテルへの送迎バスの中で散々注意されました。ぼったくり対策として、流しの自転車タクシー(シクロ)やバイクタクシーには乗らない、タクシーはVINASUNとMAILINH以外には乗らない、バイクのひったくり対策として、バッグをたすき掛けにする、スリ対策は、ズボンのポケットに財布を入れない、パスポートは絶対に持ち歩かない、といった具合です。被害は、シクロ、タクシー、ホテル、みやげ物店、レストランと多岐にわたり、片時も油断できない様子、安全、安心の日本とは全く違います。
私も被害を受けました。思い出すと相手にも自分自身にも腹が立つのですが、自分への戒めとしてここに書き記しておきます。長文ですが、興味ある方はお読みください。
タクシーの運転手に釣りがないと騒がれ、丁度の金額で支払おうと、不慣れな上に種類も多いドン紙幣を妻がチェックしていたときのことです。運転手が、あなたは持っていないのか、という感じで私のポケットを探りました。親切を装って、途中で助手席に乗せられていたのです。財布を見つけ出し中身を見た直後に、突然新聞紙を取りだし何かわめきましたが、すぐおとなしくなりホッとしているところで財布を返してきました。
冷静に考えるとこれで十分に危ういのですが、不思議にも何の疑いも持ちませんでした。釣りが必要な高額紙幣しかないことが分かってくれただろう、などとむしろ安堵すらしています。日本であれば、運転手に財布を確認してもらっても、まあそんなことは起きませんが、十分安心安全、そんな環境にすっかり慣れていて、ボケていたに違いありません。それに、運転手の親しげな態度にすっかり騙されました。車を降りて、妻に言われて財布を確認すると現金がなくなっていたのです。1万円以上の被害でした。
観光初日でした。まずタクシーで旅行会社へ。ホテルからはVINASUNタクシーで安心でしたが、何回か停車して旅行会社の場所を尋ねていたので、頼りなさを感じていました。降りてからスマホで現在地を確認すると、全く違う場所、どうしよう、困った、というところにタクシーが止まり、話しかけてきたのです。とても親しげで親切そうな態度に、場所の間違いに気付いた運転手が戻ってきてくれた、と勝手に勘違いして乗り込んだのが運の尽きでした。とんでもない悪質運転手だったのです。違う運転手だったことを妻は知っていたようですが、思い込んでいる私には分かりませんでした。
車が少し動いたところでスマホを見ると目的の旅行会社近くを走っていたので安堵し、運転手をますます信用してしまいました。後で妻が言うには、このときは1ブロックか2ブロックを周って元のところに戻っただけ、とのこと、結局、最初に降りたところは正しかったのです。「全く違う場所」はスマホの誤表示でした。スマホだけに頼り、表示を信用して慌ててしまった自分が情けなくなります。慌てたときにとんでもない判断と行動に出る、それはオレオレ詐欺被害そのもの、私も要注意のようです。
料金は35,000ドン、175円程度、妻が、慣れないドン紙幣を探しているときを狙っての犯行でした。後で考えると、一周しただけにしては高すぎます。かなり走った最初のタクシーが40,000ドン、200円程度でしたから、メーターに細工があったのかもしれません。それにこれも後からですが、最初のタクシーが目的の旅行会社を尋ねるために停車したとき、この悪質運転手がやって来て、勝手にドアを開けて手に持った何枚かのお札を振り回してわめいていました。何だったのかさっぱり分からないのですが、このときから「不慣れな観光客」と目を付けていたのでしょう。
翌々日、水上人形劇チケット売場近くで、この悪質運転手を妻が見つけました。すぐに近寄って行って、金を返せ、と迫り、至近距離でカメラを向けると手で顔を隠し、停まっている車の陰に逃げ込みました。金を返せ、と何回か大声で叫び、追いかけようとすると、妻が危ないからやめろと手を引っ張ります。それもそうか、とその場を離れたのです。逃げて車の陰からこちらを窺っている様をみていると、所詮はコソ泥、という気がして、それに罵声ともいえる大声を相手に何回か浴びせたこともあって、少しは気が晴れました。
失敗はこれだけではありません。帰国した翌日の夕食後にお腹が少し痛くなりトイレに行きました。下痢気味でした。やや不調のまま3日後、大学時代の友人たちとの飲み会があり、飲み食いをかなり控えめにしたつもりでしたが、下痢が悪化してしまいました。その後お粥の毎日、普通の食事に戻したのは帰国から8日目、ほぼ完治と思われたのは16日目でした。こんなに長く続くお腹不調は近年なく、原因はベトナムに間違いありません。友人が東南アジアでひどい目に遭っていたので、かなり注意していたのですが、やられました。