両岸に迫る切り立った岩山の間を縫うように、静かに進むクルーズ船、鏡のような海面に映し出される岩山と青空、朝の清々しい空気とあいまって、神々しいばかりの自然の美しさに心打たれました。この風景だけで、今回の北欧夏の旅に出た価値がありました。ノルウェーのソグネフィヨルド、その最も狭いところを巡るクルーズ、グドヴァンゲンという港を朝8時半に出て、フロムという港までの2時間、心洗われる思いでした。
前日から、グドヴァンゲンのがらんとした港にポツンとあるコテージに宿泊しました。崖となって迫る岩山に挟まれた谷間、そこを流れる川が、フィヨルドの海に注いでいます。崖からは何本かの細い滝が流れ落ち、氷河が削り取った荒々しくも美しい景観を作り出しています。ぶらぶら歩きながら、美しい景色を堪能しました。
コテージの屋根には草が生えています。断熱のためでしょうか、この辺りで時々見かけるスタイルです。屋根には大きな窓もあって、外の明かりがもろに入ります。この日の日没は22時13分、その後も空は白く、なかなか暗くなりません。ノルウェーの人はこんな夏の深夜を楽しむそうですが、寝たい私にはたまりません。アイマスクを借りて寝ました。
ハダンゲルフィヨルドというところもクルーズし、アナ雪でエルサが作る氷の宮殿のモデルとなった木造教会を訪れ、フロムから山岳鉄道に乗り、街歩きでは、モスクワ、ベルゲン、オスロ、コペンハーゲン、ストックホルムを訪れる、といった盛りだくさんの旅、ツアー並み、いやそれ以上の効率のよさで観光してきました。何日もかけて、バス停位置やバス時刻などを根気よく事前調査した成果です。
北欧はキャッシュレス社会、最初のノルウェーで5千円だけ両替しましたが、現金不要を体験し、デンマーク、スウェーデンでは両替しませんでした。また、日本で購入したデータ通信用SIMも、動きが鈍かったモスクワとは違い、サクサクと気持ちよく動きました。電車やバスの時刻もヨーロッパとしては正確で、冷たい水道水が飲め、社会インフラが高度に整備されている様子です。我々の旅に付きもののトラブルがほとんど無かったのは、そのためだったのでしょう。
食事では、ノルウエーのサーモン、デンマークの乳製品、スウェーデンの魚介類などを楽しみました。ソフトクリームが、少し大きめではありますが900円、中ジョッキービールが1200円、と物価の高い北欧なので、努めて日本円に換算しないようにしています。換算すると食べることができないものばかりです。
ストックホルムの地下鉄で乗車ホームを尋ねたとき、いつか日本に行きたい、でも物価が高いと友人から聞いている、と言われました。北欧の人から、日本は物価が高い、と聞くのはちょっとびっくり、そんなことはない、と具体的な価格などを説明しておきました。旅行中、日本人か、と何人かに尋ねられています。とても親日的な印象です。
日本が酷暑で大変なときに、快適な北欧で過ごすことができ、天候にも恵まれた、思い出深い旅となりました。