今回の旅のハイライトはパレルモの王宮内パラティーナ礼拝堂でした。多くの教会や礼拝堂を見てきましたが、これほど美しい礼拝堂は初めてです。シチリアが地中海で最も財力ある国に発展したノルマン王朝時代(12世紀)に造られました。黄金色、青、赤、緑のモザイクが壁一面を覆い、900年近くも経つのに、色褪せることなく鮮やかに美しく輝いています。
イスラム勢力を排除しノルマン王朝を確立したノルマン勢力は、バイキングを祖先とし、海賊となったり傭兵として異国の君主に仕えたりして、異文化に触れていたためか、これを積極的に採り入れ、活用して繁栄をもたらしました。礼拝堂も、壁や床の金地モザイクや大理石モザイクはビザンチン職人、中央身廊天井の木製鍾乳洞造り装飾はイスラム教徒の職人によって創られています。しかし、ノルマン王朝のリーダーシップが失われるとともに異文化間の争いが増え国は衰退していきます。国の繁栄には強力なリーダーシップが必要なのでしょう。
トラベルにトラブルは付き物ですが、今回はユーロ不足という事態でした。家族経営の小さなB&Bホテルで、クレジット決済ができません。でも現金で支払うと、楽しみにしていた古代ローマ時代のモザイク画見物ができないのです。土曜日で両替ができずにほとほと困っている我々を見かねて、ホテルのご主人が「日本円でもいいよ」と言ってくれました。家族が集まってきて、日本円を初めて見た、と珍しがっていましたが、本当に助かりました。
この親切なご主人がバス停まで車で送ってくれたのですが、切符売場でバス会社職員と何やら交渉らしき話を始めました。最後に、「セーフ!」と安堵した様子、後で考えると、バスを出す出さない、といった話のような気がしています。バスの乗客は3人、1人は途中の町で早々と降りたので、我々2人の貸切状態だったのです。悪名高いバス会社のようで、突然の運休に泣かされた話がブログにあります。この次のバスは夕方発、モザイク画見物はできません。ホテルのご主人が交渉してくれた、と推測しているのですが、そのおかげです。
翌日もトラブルが。大晦日でレストランがどこも満席、翌元旦は休みの店がほとんどで、2日間、ホテルの部屋でのカップラーメンとなりました。2日分の水と果物などを買いに出かけてホテルに戻るとき、「『年末年始はシチリア』と言えば聞こえはいいけど・・・・」と妻がつぶやいています。でも、熱々のカップラーメンも悪くはなく、真剣にレストラン探しをしたことも良い思い出となりました。トラブルが楽しめなくては、トラベルは楽しめない、という事だと思います。