ここ数年で本の概念が変わるのではないか。従来であれば評価されないような作品でも、TV、映画との連動による話題性だけでメガヒットとなるし、あまり考えずに先へ読み進むことができるケータイ小説もヒットしている。「世界の中心で、愛をさけぶ」(片山恭一著)「Deep Love」(Yoshi著)などのヒットがその実例なのだろう。月刊「創」(つくる)編集長篠田博之(しのだ ひろゆき:1951年茨城県生まれ)氏は本の内容や質以外のものがヒットの条件となっている現状から「本の概念が変わる」と考えているようだ。
本全体の売上が落ち続けているなかで一部の本がメガヒットとなっている。そんな本の後を追って、内容や質を追う以上に話題作りや手軽さを追う傾向が強まっているは淋しい思いがする。
出版界での就職は他の業界とはかなり異なるようだ。ごく僅かな設備と資本で開業できるので小さな会社が多く、必要なときに募集するアルバイト採用や中途採用がほとんどで、定期採用や新卒採用は一部の大手が実施しているのみだ。主な大手は講談社、小学館、集英社で、4,600社ある出版社の全売上の20%強をこの3社が占めている。ちなみに社員10人以下の会社が51%あるそうだ。電通、博報堂、エーディケーの3社で全体売上の35%強を占める広告業界に似た構造だ。全体から見ると僅かな人数採用となる大手にこだわるよりも、中小で経験を積むことを優先したほうがよいのかもしれない。
1971年に総合誌として創刊された「創」は、篠田氏が編集長となった1981年にマスコミ専門誌へと方向転換した。バックもない出版社で1つの雑誌を30年以上にもわたり発刊し続けられるのは業界通であり続けているからなのだろう。出版界の現状を僅かだが垣間見ることができた。