「なさけない」と送金指示メール問題での民主党永田寿康衆院議員、前原誠司代表への憤りから始まった作家大下英治(おおした えいじ:1944年広島県生まれ)氏の、開講式(2005年10月15日)に続く2回目講座は前回同様に氏の凄みを強く感じるものだった。政治は血を流さない戦争(毛沢東)であり、殺るか殺られるかの世界だ。そんな認識がなければ手ごわい金正日などと戦えない。政治は学問ではないのだ。と30分にわたり一気にまくし立てた。やくざや政治家を多く見てきた大下氏の言葉だけに迫力がある。
この確固たる立ち位置が氏の作品を読み応えのあるのもにしているのだろう。メールを入手した永田議員は「ヒーローになれる」と興奮し、メール受取人への接触もせずに国会の場でいきなり私人を攻撃した。様々な情報を集めたうえで、取捨選択しながら慎重に書く大下氏からみると、まるで子供なみの判断力と行動のように見えるのだろう。そんな人間が国会議員などをやっていることに強い怒りさえ抱いている様子だった。
週刊文春の記者だった頃に取材先から帰ると「良いエピソードはとれたか」と訊かれたそうだ。丁度営業員が「注文はとれたか」と成果を訊かれるように。「良いエピソード」とは「絵になる、目の前に絵が浮き出てくるエピソード」だ。だから、取材相手の態度、話し方、語尾、服装、持ち物や周辺の調度品などのディテールも重要となる。
この頃に習得した書き方のテクニックは「出だし3行で読者を引きつける。背景などの説明は後回しにしてとにかくまず読者を引きつけ、その後簡単に背景を説明する。この背景説明は読者が飽きやすくなる部分なので短く。その後本題に入り『もっと読みたい』と読者が思うような高まりまで持っていったところで終わらせる(図の曲線のようなイメージ)」というものだそうだ。
2回目の講座だが新鮮で充実した内容だった。取材と執筆を精力的に続けている大下氏の多様で豊富な経験と高い見識がうかがえる。現在10冊以上の本を同時執筆中という多忙と、歯が腫れて万全の体調とはいえない状態で、しかも今日の朝11時に花田編集長から急遽電話依頼されての講座となったという。一緒に仕事をした人たちとそれほど強いつながりを維持する花田編集長の凄さをまた再認識した。