7、8回は書き直した。書いた直後は「やった」と思うが、しばらくして読み直すと気にいらない、そんな繰り返しだ。書き直すたびに内容が収束する感覚があったので、書き直し作業を続けた。この書き直しがテーマをより深く考え、少しは読める文章にできた要因だと思う。このように「書きながら考える」のではなく、「考えてから書く」ほうが効率的だとは思うが、そんな能力がないのだから仕方がない。
考えないと文章は書けない、ということを自分なりに再認識した。マスコミの学校で鈴木洋嗣氏が「執筆のための『見立て』は、考えて、考えて、考え抜くことが重要」(2006年2月17日の講座)と言っていた。この場合の『見立て』とは、執筆者の理解、考え方だと思うが、『見立て』が弱いと文章も弱いし、まとまらない。だから考え抜く。考えるときに大切なことは、山田ズーニー氏の「『良い問い』というスコップを使って自分自身の心の中を何回も掘り下げることによって自分自身を発掘し表現する」(2005年11月12日の講座) にある『良い問い』なのだろう。
今回のテーマは「長女を失った友人の奥さんが犬に慰められた」だった。何回か書き直していく中で、「犬はなぜ人を慰めることができるのか?」という問いが出てきて、それを考えるころから、テーマを書き切る自信が湧いてきた。佐野眞一氏の「書くことは『知の格闘技』」(2005年12月3日の講座)、轡田隆史氏の「自覚があれば小さな体験であっても素晴らしい文章が生まれる。『自覚』のための有力な方法が、どんなことにも『なぜ』という疑問を持つことなのだ」(2006年2月4日の講座)というマスコミの学校での講義内容の意味が少し理解できた気がする。
出だしの大切さも痛感した。入稿直後に会社の同僚に読んでもらうと、最初にインパクトのある文章が欲しい、出だしが大切という。大下英治氏の「出だし3行で読者を引きつける」(2006年2月25日の講座)とか、轡田隆史氏の「いきなり本題から入り、説明は後から」(2006年2月4日の講座)といった言葉を思い出す。午後9時ごろ帰宅して、朝4時ごろまでかけて書き直すと、少し引き締まった原稿となる。同僚に「ぐっとよくなったょ」と言ってもらい、嬉しい気持ちで再入稿した。