病気になった愛犬の痛々しい姿を見るのは辛いものです。どこがどのくらい痛い、などと本人は言わないので想像するしかなく、想像はふくらみ辛さもふくらみます。会社での仕事も手につきません、といってもそれほど大そうな仕事でもないのですが。頼りにするのは獣医さんですが、頼りにならない獣医さんもいます。
今回、1人目の獣医さんは頼りなく、2人目の獣医さんは冷たく、3人目にやっと頼れそうな獣医さんに出会うことができました。そういうなかで犬医療の現状を垣間見ることとなり、良い獣医さんを見つけることがいかに大切かを知ったのです。人間医療のように恵まれた医療環境ではない犬医療では、人間医療以上に獣医さんしだいで、獣医さん個人の人格や知識、経験に全面的に頼らざるを得ないからです。
私が垣間見た、理解した犬医療の現状とは、総合病院や専門医、医師の人数や収入が人間医療と比べて少なすぎる、ということです。
人間医療では当たり前の総合病院や専門医は僅かで、簡単な設備の個人経営病院で、数人の獣医さんがいるものの補助する看護婦さんはいない、専門などなくどんな病気でも一人の獣医さんが診断、治療する、というところがほとんどではないでしょうか。獣医さんの人数も少ないように思います。数値だけでみると、人間医療が人口340人に1人の医師なのに対して、犬猫医療では犬猫2,500頭に1人の獣医師なのです。(注1)我家の近所にある動物病院はいつも混んでいて1時間待ちが当たり前となっています。診療費も低いかもしれません。10割負担である愛犬モモの診療費が3割負担である私自身の診療費とほぼ同額なのです。診療内容が違うので比べるには無理があるし、動物病院によっても違うのでしょうが、人間医療のお医者さんと同等の収入を獣医さんが得ているとは、失礼ながら思えません。
このような犬医療の現状では、良い獣医さん選びが大切だと最初に述べましたが、医療の専門知識のない飼い主がどのように良い獣医さんを見分けたらよいのでしょうか。私の場合は、信頼できそうか否かが大きなポイントとなりました。今回診ていただいた3人の獣医さんのうち、1人目の獣医さんの診断は椎間板ヘルニアで処方も消炎鎮痛剤と、結果的には3人目の獣医さんとほぼ同じだったのですが、レントゲン撮影もなしに触っただけで椎間板ヘルニアと診断されても納得できず、頼りなさだけが残ったのです。2人目の獣医さんはインターネットや雑誌で名医として取り上げられている方ですが、ほとんど診察せずに手術以外は考えてもくれません。外科専門医なので当然だったのかもしれませんが、冷たい印象で信頼関係が築けるような感じではありませんでした。3人目の獣医さんが信頼できそうだと感じたのは、モモの入念な診察、確認のレントゲン撮影、同僚との診断協議などを目の当たりにしたからです。この獣医さんは、何代かの犬を長年飼っている友人に紹介していただきました。友人にはいろいろな病気の経験があるのでしょう、確かに良い獣医さんでした。内科療法だけでモモを元気にしてくれたのです。そういう意味では信頼できる経験豊富なブリーダーに紹介していただくのも良いのかもしれません。
注1:
人間医療は医師約37万人(厚生労働省発表「医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」2004年12月現在)、日本の人口約1億2千600万人(厚生労働省発表「人口動態統計の年間推計」2004年10月現在の推定人口)で、340人に1人の医師となり、犬医療では、犬猫個人診療施設の獣医約1万人(農林水産省発表「獣医師の届出状況(獣医師数)」2004年12月現在)、犬猫の飼育数約2,500万頭( ペットフード工業会 第12回 犬猫飼育率 全国調査2005年10月)で、2,500頭に1人の獣医となります。