78歳になる長兄が肝臓癌で大きな手術を受けました。手術は成功し、癌を全て取り除き転移もないとのことでひと安心だったのですが、術後の経過が思わしくありません。もう、1年以上入院しています。手術後、誤嚥するようになり、嚥下機能改善手術を受けたり、転倒で頭を打ち開頭手術を受けたりしているのです。
兄弟という、身近なところでの大病、喧嘩仲間だった次兄はとりわけ心配そうで、しかも1歳違いなので、次は自分か?とより深刻に受け止めています。私は6歳違いですが、体型は細身の長兄似、考え方や行動にも似たところがあり、当然ながら他人事ではありません。
転倒は、嚥下機能回復に歩きを勧められ、早朝から院内を歩いて病室に戻ってからのこと。それまでに3回も転倒しており、本人も危ないと思いつつ、早く嚥下機能を取り戻したい一心だったのでしょう。私でも、危ないと思いつつもやはり歩いたかもしれません。そういうところは似ていて、「兄貴は何でもやり過ぎなんだ」という言葉は、そのまま自分自身への言葉でもあるのです。「おれはそんな無理はしない」と妻に言うのですが、信用してくれません。でも、兄貴が身をもって教えてくれたことです、心するようにします。
小さいころ、どこまでやったら怒られるのか分からない長兄は両親によく怒られていました。それを見ていた私は兄貴ほどは怒られずに済んだのです。兄貴を反面教師にして、うまく立ち回ったと言えます。いろいろなことを兄貴から学びましたが、最も感謝しているのは、勉強でも仕事でも、人一倍頑張る姿を兄弟に見せてくれたことでした。おかげで、私も頑張ることができました。
「友人と飲みに行く」なんて聞いたことがない、と兄貴の嫁さんが言っていました。友人らしい友人がいないようで、「人とのつながり」の無さが健康に影響したのではないか、どのように影響したのかは分かりませんが、そんな気がします。頭を打った影響で、身体が思うように動かない状態で、声も出せません。それまでは、見舞いに行って兄弟喧嘩のような形ちで帰ったこともありますが、今は喧嘩もできません。じゃあ帰るね、と言うと、かすかに手を振ってくれたときがありました。そんなささやかな反応に、希望を見出し、嬉しさを感じるお見舞いとなってしまいました。