スペインに旅行してきました。6月、ベストシーズンです。空に広がる濃い青のスパニッシュブルーと地上一面に咲き誇るひまわりが印象に残った旅でした。紫外線は日本の4倍だとか。肌を刺すような強い日差しですが、日陰に入ると涼しく、空気が乾燥しているのがよく分かります。雨がほとんど降らないとのことで、土地は痩せています。水を引くことができたところだけが緑となり、オリーブ、オレンジ、ブドウなどが栽培され、その向こうの山は剥き出しの岩肌、そんな風景が続きました。
羽田からパリ乗継でバルセロナへ、帰りはマドリッドからパリ乗継で羽田という、10日間のツアー旅行でした。バルセロナからマドリッドまでは、各地を観光しながらのバス旅行、5日間で1,960kmほど走りました。サクラダファミリアのあるバルセロナから水道橋のタラゴナ、ラ・ロンハという15世紀の商品取引所のあるバレンシア、アルハンブラ宮殿のグラナダ、白い村ミハス、カテドラルのあるセビージャ、巨大モスクだったメスキータがあるコルドバ、白い風車のラ・マンチャ地方、そしてプラド美術館などのマドリッドです。
サクラダファミリアやアルハンブラ宮殿は見応えがありましたが、自由時間に妻と二人で出かけて見た、モンセラットの黒いマリア様の優しげな顔、セゴビアのローマ時代の巨大な水道橋の迫力ある造形美、トレドの古い街並みの高台からの素晴らしい眺望などがより強く印象に残っています。旅は手作りの方が思い出に残るということでしょうか。その分苦労も多かったのですが、だからこそ強い思い出となったのかもしれません。
苦労や困難、つまりトラブルはトラベル、旅の語源だそうです。今回見舞われた多くのトラブル、少々長いのですが、個人的な記録として以下にまとめてみました。興味ある方はお読みください。
最初のトラブルは、日本を飛び立つ前です。羽田へは川崎でJRから京急に乗換え、少し歩きます。雨なので地下街を通らざるを得なかったのですが、早朝のためエスカレータが止まっていました。20キロ以上あるスーツケースを持って階段を下りて上がって、京急のホームに着いたときには電車が出た後でした。自宅から川崎へは、早めの4時55分発始発に乗ったので、集合時間羽田6時5分には間に合っています。
飛行機では、羽田を発った直後から大揺れ、主翼の先がしなるほどです。それが1時間近くも続きました。数えきれないほど飛行機に乗っていますが、これほど大きくかつ長い揺れは初めてです。妻は酔ってしまい、着陸したときに乗務員から、空港ドクターに行きますか、と言われるほどの憔悴ぶりでした。その後2日ほどはほとんど食べられない状況ではありましたが、観光はしっかり楽しみました。せっかくのスペイン、飛行機酔いなどに負けてはいられません。
ツアー旅行なので添乗員さんと一緒のときはトラブルらしいトラブルは無く、自由時間のときにヒヤヒヤする場面がいろいろとありました。
最初はバルセロナからモンセラットという、山の上にある教会に二人で行ったときです。午前中市内観光で、昼食後に自由行動なのですが、解散が遅れて15時となり乗車予定の電車まで36分となってしまいました。その時間で、解散場所から地下鉄に乗り、予定電車に乗換えなければなりません。地下鉄も電車も初めて、路上の地下鉄出入口を探すのにうろうろ、切符購入にもたもた、地下鉄乗車ホーム探しにおたおた、地上に出て乗換電車駅を探すのにまたうろうろ、切符購入にのろのろ、乗車電車確認にあたふた、ととにかく冷や汗の連続となりました。
特に焦ったのは、モンセラット行切符の購入です。券売機の操作が分かりません。発車まで5分ほどしかなく、慌てて駅員とおぼしき人に訊いたのですが、今から行ってもすぐ帰りの終電となり観光できない、と操作を説明してくれません。日本で調べた終電時刻であれば大丈夫、と説明するともう一人の駅員を呼んで相談しています。発車まで数分となり、1本遅れで行っても観光時間がないし、モンセラット行をあきらめなくてはいけないのか、などと考えていると、その駅員が券売機の操作を素早くやってくれました。電車に無事乗り込んでホッと一息です。
モンセラットからの帰りは幸運でした。17時8分に着いて、もう遅いためか観光客も少なく、メインの黒いマリア像を短時間で拝観することができ、帰りは終電1本前の18時15分に乗れました。バルセロナ市内からホテル送迎バスが20時に出ますが、バス発車場所の地下鉄駅到着が19時59分、1分前です。ツアー客が遅れて、バス発車が遅れることを願いつつ地下鉄を出ると、広場の反対側、200メートルほど先にバスが何台か止まっています。とにかく二人で走りました。これに乗らないと、ホテル最寄駅から1キロほど歩くこととなり、暗くもなるので犯罪に巻き込まれる心配があったのです。止まっているバスの中に送迎バスを見つけたときは、思わず、ヤッタという気持ちでした。
マドリッドからセゴビアという、ローマ時代の大きな水道橋のある街に行ったときも大変でした。このときも午後の自由時間、昼食が14時に終わりすぐに地下鉄で新幹線駅チャマルティンに向かいました。予定新幹線は15時発、ところが切符売場に行くと長蛇の列です。並んでいたら間に合いそうもないので、券売機で何とか買おうとしたのですが、いろいろ試しても15時発の便が出てきません。そうこうしているうちに発車時刻が近づき、慌てて警備員に相談し、教えてくれたサービスカウンターに行くと、切符購入の列に並ぶしかない、とのこと、しかたなく並んだときにはもう発車10分前でした。結局予定よりも40分ほど遅い新幹線となりました。30分ほど並んで買えたので、最初から並んでいれば間に合ったはず、急がば回れ、券売機などに固執せず、とにかく訊きまくって「並ぶしかない」と早く気が付くべきでした。反省。
これに懲りて、セゴビアからの帰りに、世界遺産の街トレドへの翌日の切符を買うことにしました。20時50分着でチャマルティン駅に戻り切符売場に行くと閑散としています。これならすぐ買えそうだと喜んだのですが、受付番号発行機のボタンを押しても番号レシートが出てきません。実は20時で受付が終了しており、番号レシートを持った、順番待ちの人だけが残っていたのです。うろうろしていると、若いカップルが、どうしたのですか、と親切に尋ねてくれました。明日の切符を買いたい、と説明すると、番号レシートが2枚あるから1枚あげる、と。おかげで切符を買うことができました。旅先で受ける親切のありがたさ、嬉しさを改めてかみしめたのです。
トレド観光では、往きの地下鉄や新幹線、それにトレドでのバスなどはスムース、だいぶ慣れてきた感じでした。街はキリスト聖体祭のパレードで大賑わい、お祭りで大聖堂の見物もできそうもなく、予定の新幹線16時18分発よりも1本早く帰ろうと、14時40分発のバスに乗って新幹線駅に行こうとしました。ところが、いくら待ってもバスが来ません。同じ新幹線便のチケットを持ったスペイン人カップルが、このお祭りで30分ほど遅れるようだ、とか言ってバス待ちをしているので、我々も一緒に待っていました。でも来ません。そのうち、もう来ないらしい、ということになり慌ててトレド駅に向かって歩き始めたのです。駅までの距離、時間が分からず不安でしたが、意外と近く20分ほど、15時30分には到着し、教会のような素敵な駅舎でゆっくりすることができました。
最後のトラブルは羽田で。出てきたスーツケースのキャスターが1つすっぽり取れて無くなっていました。おかげで3つのキャスターで重いスーツケースを運ぶはめになりました。でも、より丈夫なキャスターに保険で交換できそうなので、かえって良かったのかもしれません。