このページでは、第2期「マスコミの学校」を受講した内容や感想を掲載していきます。
マスコミの学校は「月刊ウイル」が主催する「編集者・ライターになるための講座」だ。開講式のこの日、講座主催者の元木昌彦氏、花田紀凱氏の挨拶に続いて大下英治(おおした えいじ:1944年広島県生まれ)氏の特別講演「選挙と報道」があった。今回の衆議院総選挙がテーマで、豊富な取材と、長年政治家たちをみつめてきた大下氏の視点から生れるノンフィクションは、分かりやすく面白く、本質に迫っている。週刊文春の記事を長年手がけてきた氏ならではだ。
全身に刺青を入れた任侠の政治家小泉又次郎の孫である小泉純一郎の喧嘩強さ、多くの政治家が政策論議や勉強会に時間を割いているときに歌舞伎やオベラの観賞に時間を割いていた小泉純一郎の聴衆を感動させる力、そういった切り口での大下氏の話は新鮮で刺激的だった。マスコミの第1線で活躍している方々の話を直接聞くことができるこの講座のすばらしさを改めて実感した。
大下氏の話を聞いていると、今回の選挙で多くの人の政治生命を奪った攻撃的な小泉首相、断片的な言葉だけで詳しい説明をしない小泉首相が、殺(や)るか殺(や)られるかの、言葉少ない任侠の世界の人間と重なって見えてくる。また、演劇好きの小泉首相が、演劇の緻密に計算された演出で多くの人が感動するのを体感し、それを政治の世界に持ち込んだとしてもおかしくはない。そう見ると、今回の郵政総選挙のシナリオは見事なものだ。大衆から見ると、単純で分かりやすく、筋が通っており、主役と悪役、刺客などの役者がそろっている。「改革を止めるな」といった、民衆に呼びかける選挙スローガンも小泉首相自身で決めた言葉だ。こうして大衆の心をつかみ、感動へと導いていく小泉大衆劇場なのだ。「課題は郵政だけでなくたくさんある、民主党のマニフェストを読んで欲しい」と、大衆がマニフェストを読むと考えた秀才岡田代表は、勉強はしないがイノチはかける小泉首相にあっけなく負けてしまった。
大下氏の話の中に、「衆議院解散を思いとどまらせようと小泉首相を説得しに行った森元総理が帰り際に首相から『外に出たら記者がいっぱいいるだろう。これ(ビール缶)を持って、俺のことをできるだけひどく言ってくれ』と頼まれた」というのがあった。ビール缶を片手に疲れきった顔つきで「(小泉は)変人以上だ」と語る森元首相のあのときの映像は小泉首相の本気度を十分に伝えていた。そんなエピソードを引き出す大下氏に凄みを感じた講演だった。