異例の寒波に見舞われたギリシャ、大雪で交通機関が混乱するなかでの観光旅行でした。長距離のバスや電車は通常でも本数が少なくて不便なギリシャ、それが混乱したのですから、ギリシャ語の分からない個人旅行者にとっては不安の多い、多難な移動となりました。
1日1便のバスが大雪で運休となりそうだったので、確実な電車での移動に急きょ切り替えたときのことです。駅のある町までバスで1時間、バス停から駅まではタクシー、と宿泊したホテルに言われていたので、バス停のカフェで駅までのタクシーを頼むと、そんな駅はない、と言っている様子、ここで不安が一気に広がりました。『地球の歩き方』にもある駅で、その駅でないと予定の電車に乗れず、今日の目的地に行けないかもしれません。訳が分からないまま、とにかく「駅」と言われるところまでタクシーで行くと、ちゃんと『地球の歩き方』にある駅名になっていました。何のことだったのでしょう。お互いが片言の英語のため意思疎通がうまくいかなったようです。
予定の電車に無事乗車しましたが、乗換駅で下車するつもりが、間違って1つ手前の駅で降りてしまいました。乗換駅到着時刻を過ぎていたので降りたのですが、雪のために遅れていたのです。ギリシャ語の車内アナウンスが分れば降りなかったでしょう。そこは、周囲に民家ひとつない無人駅、雪が積もった氷点下の夜、暖房のない冷えきった小さな待合室で2時間後の次の電車を待ちました。次は最終便、もし乗ったのがこの便だったら、この駅で夜を過ごすこととなり、命にも関わることでした。最終便は遅れたものの無事停車、乗り込むと、冷え切った身体が温められ、安堵と喜びをしみじみと味わいました。危ないところでした。
次の日、昨日の乗換駅で電車を待っていると、遅れていた乗換電車が急に入ってきました。停車したプラットフォームまで慌てて走り、階段でこけそうになって持っていたホットチョコレートをこぼしています。駅に案内表示がなく、ギリシャ語の構内アナウンスのみなのです。
エーゲ海のミコノス島にフェリーで夜に到着したときは、いるはずのバスが居ませんでした。そのうち、フェリーを降りた客は迎えの車で全て立ち去り、我々二人と港の保安員二人だけが残り、バスが来ないことを確信しました。保安員にタクシーを呼んでほしいと頼むと、タクシー乗場で待っていればそのうち来る、と言います。そんなはずない、と更に食い下がるともう一人が電話でタクシーを呼んでくれました。保安員二人が車で立ち去って、我々二人だけが広い港に取り残されてしばらくしてタクシーが来ました。まるで救助される遭難者のように、大きく手を振ってタクシーに駆け寄っています。
最終日、アテネ空港に行くと、出発便案内に搭乗予定の便名がありません。尋ねると欠航とのこと、航空会社のスタッフが小一時間ほどで来るからその人に相談しろ、とのことでした。結局、航空会社が手配した空港近くのホテルで1泊して、1日遅れでの帰国となりました。快適なホテルだったので、これは幸運だった、と思うようにしています。空港なので、片言でも英語での意思疎通ができたし、旅行中に直面したいくつかの困難や不安に比べれば楽勝だったといえます。
言葉が分からない国で、何かあると大変、ということを改めて認識しました。いままで何も無さ過ぎたのかもしれません。
今回の教訓を、今後のために以下に記録しておきます。興味ある方はお読みください。
1.天候異変のとき、観光地の状況をホテルに確認する。
大雪の翌日、ホテルからタクシーで1時間かけて修道院見学に出かけましたが、雪で修道院が閉鎖されていました。また1時間かけてホテルに戻っています。天候に異変があるときは、出かける前にホテルで確認すべきでした。通常を知らないので、異変の判断は難しいかもしれません。観光先や移動に問題が無いかホテルを出るときに確認することを心がけたいと思います。ストなどもあるかもしれないし。
2.お互い片言での英語が予想される場合、紙に書いたもので話をする。
バス停となっているカフェで駅までのタクシーを依頼したとき、乗車する駅名、時刻、行先を書いたものがあればお互いの確認がとれて不安を持つことは無かったと思われます。予定ルートであれば事前に印刷してあるのですが、予定外のルートだったので印刷したものがありませんでした。手書きで用意すべきでした。
3.途中下車するバスや電車では、乗車する前にGPSを作動させておく。
乗換駅の1つ手前の駅で誤って降りたときは、GPSが動作していませんでした。GPSは停止した状態で位置検知を開始・完了しておけば、走行中でも位置検知を続けますが、走行中に位置検知を開始すると検知しないときがあるようです。山間部だから、と考えたのですが、海上のフェリー窓際での位置検知もできませんでした。
4.停車した駅名は、現地の人と思われる人に確認する。
乗換駅を間違って降りたとき、停車した駅名を確認したのがフィリッピンからの旅行者でした。母と娘の二人連れ、この人たちも乗換駅到着時刻を過ぎていたので乗換駅と判断したようで、自信たっぷりに「この駅だ」と言って、一緒に降りました。結局、間違って降りたのは4人だけ、駅舎にある駅名を見て間違ったことに気が付いたときには電車はすでに立ち去っていました。車内で、訊く人を間違えました。現地の人だと思ったのが旅行者だったのです。
5.電車の場合、全停車駅を事前に確認しておく。
全停車駅を印刷、あるいはスマホに入れておけば、乗換駅の前に駅があることも事前に分かり、間違って降りることはなかったでしょう。
6.何番ホームから出るのか分からない時は、複数の人に尋ねておく。
乗換の電車が、いつ、どのホームに来るのか分からなかったので、何人かに尋ねました。そのときの答は「まだ分からない」でしたが、後で、そのうちの一人が、もうすぐ電車が入ってくる、と教えてくれました。おかげで、近づく電車を見つけて停車したホームに走って乗車できました。複数人に尋ねておけば一人ぐらいは教えてくれるということでしょう。それにしても駅の案内が不親切すぎます。
7.船のチケットを買うときに、出港場所だけでなく、入港場所も確認する。
ミコノス島にはオールド・ポートとニュー・ポートがあり、ニュー・ポートだと町までバスかタクシーになります。今回の入港がニュー・ポートと確認していれば、町へのアクセスを事前に検討できました。確認不足でした。
8.島の観光は、帰りの船が出なくても日本には帰れる、余裕のある行程にしておく。
今回は、帰国直前でのミコノス島往復でしたが、天候が荒れることなく、予定通り帰れました。でも、船の欠航などを考えて、余裕のある往復とすべきでした。
9.帰りのフライトには余裕を持って出る。
ドイツのメルケル首相が訪問しており、国会周辺の地下鉄駅閉鎖や道路交通規制がありました。ホテルは国会の斜め前、国会前広場から出る空港行バスの運行をバス停のチケット売場で確認すると、ここからは出ない、とのこと、タクシーがちゃんとバス停で控えています。地下鉄でも空港に行けますが、駅が閉鎖されていて乗れません。タクシーか、と考えていたところに空港行バスが入ってきて、無事空港まで行くことができました。時間的な余裕があったので、バス停でうろうろできましたが、他の旅行客はさっさとタクシーで行ったようで、バスの乗客はまばら、空港で降りたのは我々二人だけでした。チケット売場での確認は何だったのでしょうか。