海外旅行

No.089:苦労が多かった旅

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バスからの風景。オリーブ畑の先には禿山が

 スペインに旅行してきました。6月、ベストシーズンです。空に広がる濃い青のスパニッシュブルーと地上一面に咲き誇るひまわりが印象に残った旅でした。紫外線は日本の4倍だとか。肌を刺すような強い日差しですが、日陰に入ると涼しく、空気が乾燥しているのがよく分かります。雨がほとんど降らないとのことで、土地は痩せています。水を引くことができたところだけが緑となり、オリーブ、オレンジ、ブドウなどが栽培され、その向こうの山は剥き出しの岩肌、そんな風景が続きました。

 羽田からパリ乗継でバルセロナへ、帰りはマドリッドからパリ乗継で羽田という、10日間のツアー旅行でした。バルセロナからマドリッドまでは、各地を観光しながらのバス旅行、5日間で1,960kmほど走りました。サクラダファミリアのあるバルセロナから水道橋のタラゴナ、ラ・ロンハという15世紀の商品取引所のあるバレンシア、アルハンブラ宮殿のグラナダ、白い村ミハス、カテドラルのあるセビージャ、巨大モスクだったメスキータがあるコルドバ、白い風車のラ・マンチャ地方、そしてプラド美術館などのマドリッドです。

 サクラダファミリアやアルハンブラ宮殿は見応えがありましたが、自由時間に妻と二人で出かけて見た、モンセラットの黒いマリア様の優しげな顔、セゴビアのローマ時代の巨大な水道橋の迫力ある造形美、トレドの古い街並みの高台からの素晴らしい眺望などがより強く印象に残っています。旅は手作りの方が思い出に残るということでしょうか。その分苦労も多かったのですが、だからこそ強い思い出となったのかもしれません。

 苦労や困難、つまりトラブルはトラベル、旅の語源だそうです。今回見舞われた多くのトラブル、少々長いのですが、個人的な記録として以下にまとめてみました。興味ある方はお読みください。

 


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 最初のトラブルは、日本を飛び立つ前です。羽田へは川崎でJRから京急に乗換え、少し歩きます。雨なので地下街を通らざるを得なかったのですが、早朝のためエスカレータが止まっていました。20キロ以上あるスーツケースを持って階段を下りて上がって、京急のホームに着いたときには電車が出た後でした。自宅から川崎へは、早めの4時55分発始発に乗ったので、集合時間羽田6時5分には間に合っています。

 飛行機では、羽田を発った直後から大揺れ、主翼の先がしなるほどです。それが1時間近くも続きました。数えきれないほど飛行機に乗っていますが、これほど大きくかつ長い揺れは初めてです。妻は酔ってしまい、着陸したときに乗務員から、空港ドクターに行きますか、と言われるほどの憔悴ぶりでした。その後2日ほどはほとんど食べられない状況ではありましたが、観光はしっかり楽しみました。せっかくのスペイン、飛行機酔いなどに負けてはいられません。

 ツアー旅行なので添乗員さんと一緒のときはトラブルらしいトラブルは無く、自由時間のときにヒヤヒヤする場面がいろいろとありました。

 最初はバルセロナからモンセラットという、山の上にある教会に二人で行ったときです。午前中市内観光で、昼食後に自由行動なのですが、解散が遅れて15時となり乗車予定の電車まで36分となってしまいました。その時間で、解散場所から地下鉄に乗り、予定電車に乗換えなければなりません。地下鉄も電車も初めて、路上の地下鉄出入口を探すのにうろうろ、切符購入にもたもた、地下鉄乗車ホーム探しにおたおた、地上に出て乗換電車駅を探すのにまたうろうろ、切符購入にのろのろ、乗車電車確認にあたふた、ととにかく冷や汗の連続となりました。

 特に焦ったのは、モンセラット行切符の購入です。券売機の操作が分かりません。発車まで5分ほどしかなく、慌てて駅員とおぼしき人に訊いたのですが、今から行ってもすぐ帰りの終電となり観光できない、と操作を説明してくれません。日本で調べた終電時刻であれば大丈夫、と説明するともう一人の駅員を呼んで相談しています。発車まで数分となり、1本遅れで行っても観光時間がないし、モンセラット行をあきらめなくてはいけないのか、などと考えていると、その駅員が券売機の操作を素早くやってくれました。電車に無事乗り込んでホッと一息です。

 モンセラットからの帰りは幸運でした。17時8分に着いて、もう遅いためか観光客も少なく、メインの黒いマリア像を短時間で拝観することができ、帰りは終電1本前の18時15分に乗れました。バルセロナ市内からホテル送迎バスが20時に出ますが、バス発車場所の地下鉄駅到着が19時59分、1分前です。ツアー客が遅れて、バス発車が遅れることを願いつつ地下鉄を出ると、広場の反対側、200メートルほど先にバスが何台か止まっています。とにかく二人で走りました。これに乗らないと、ホテル最寄駅から1キロほど歩くこととなり、暗くもなるので犯罪に巻き込まれる心配があったのです。止まっているバスの中に送迎バスを見つけたときは、思わず、ヤッタという気持ちでした。

 マドリッドからセゴビアという、ローマ時代の大きな水道橋のある街に行ったときも大変でした。このときも午後の自由時間、昼食が14時に終わりすぐに地下鉄で新幹線駅チャマルティンに向かいました。予定新幹線は15時発、ところが切符売場に行くと長蛇の列です。並んでいたら間に合いそうもないので、券売機で何とか買おうとしたのですが、いろいろ試しても15時発の便が出てきません。そうこうしているうちに発車時刻が近づき、慌てて警備員に相談し、教えてくれたサービスカウンターに行くと、切符購入の列に並ぶしかない、とのこと、しかたなく並んだときにはもう発車10分前でした。結局予定よりも40分ほど遅い新幹線となりました。30分ほど並んで買えたので、最初から並んでいれば間に合ったはず、急がば回れ、券売機などに固執せず、とにかく訊きまくって「並ぶしかない」と早く気が付くべきでした。反省。

 これに懲りて、セゴビアからの帰りに、世界遺産の街トレドへの翌日の切符を買うことにしました。20時50分着でチャマルティン駅に戻り切符売場に行くと閑散としています。これならすぐ買えそうだと喜んだのですが、受付番号発行機のボタンを押しても番号レシートが出てきません。実は20時で受付が終了しており、番号レシートを持った、順番待ちの人だけが残っていたのです。うろうろしていると、若いカップルが、どうしたのですか、と親切に尋ねてくれました。明日の切符を買いたい、と説明すると、番号レシートが2枚あるから1枚あげる、と。おかげで切符を買うことができました。旅先で受ける親切のありがたさ、嬉しさを改めてかみしめたのです。

 トレド観光では、往きの地下鉄や新幹線、それにトレドでのバスなどはスムース、だいぶ慣れてきた感じでした。街はキリスト聖体祭のパレードで大賑わい、お祭りで大聖堂の見物もできそうもなく、予定の新幹線16時18分発よりも1本早く帰ろうと、14時40分発のバスに乗って新幹線駅に行こうとしました。ところが、いくら待ってもバスが来ません。同じ新幹線便のチケットを持ったスペイン人カップルが、このお祭りで30分ほど遅れるようだ、とか言ってバス待ちをしているので、我々も一緒に待っていました。でも来ません。そのうち、もう来ないらしい、ということになり慌ててトレド駅に向かって歩き始めたのです。駅までの距離、時間が分からず不安でしたが、意外と近く20分ほど、15時30分には到着し、教会のような素敵な駅舎でゆっくりすることができました。

 最後のトラブルは羽田で。出てきたスーツケースのキャスターが1つすっぽり取れて無くなっていました。おかげで3つのキャスターで重いスーツケースを運ぶはめになりました。でも、より丈夫なキャスターに保険で交換できそうなので、かえって良かったのかもしれません。

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No.156:ガウディの世界 (2020年01月31日)

大輪の花のような大きな丸窓、そこにはめ込まれた花びらの形をした色とりどりのステンドグラスを通して、明るく柔らかい光が差し込んでいます。バルセロナ近郊の小さな町にあるコロニア・グエル教会です。ガウディ建築の原点で、最高傑作とも言われています。床から伸びるやや傾いた柱は樹木を連想させ、天井を這うたくさんの梁はその枝を連想させます。まるで林の中にいるようです。

No.151:北欧夏の旅 (2019年08月31日)

 両岸に迫る切り立った岩山の間を縫うように、静かに進むクルーズ船、鏡のような海面に映し出される岩山と青空、朝の清々しい空気とあいまって、神々しいばかりの自然の美しさに心打たれました。この風景だけで、今回の北欧夏の旅に出た価値がありました。ノルウェーのソグネフィヨルド、その最も狭いところを巡るクルーズ、グドヴァンゲンという港を朝8時半に出て、フロムという港までの2時間、心洗われる思いでした。

No.144:多難なギリシャ旅行でした (2019年01月31日)

 異例の寒波に見舞われたギリシャ、大雪で交通機関が混乱するなかでの観光旅行でした。長距離のバスや電車は通常でも本数が少なくて不便なギリシャ、それが混乱したのですから、ギリシャ語の分からない個人旅行者にとっては不安の多い、多難な移動となりました。

No.141:親日国ポーランド (2018年10月31日)

 初めてのポーランドでは多くの親切に出会いました。ヤヴォルの平和教会では教会のパイプオルガン演奏を収録したCDをいきなりプレゼントされ、戸惑ったり、喜んだり、ワルシャワの中央駅では広大な構内をバス停まで案内してもらい大助かりでした。いずれもたまたまそこにいた人たちで、CDは教会の受付でわざわざ購入したものらしく、バス停に案内してくれた人は売店で後ろに並んだ人でした。券売機の操作でまごついていると声を掛けてくれたり、乗車ホームの確認ができずに困っていると快く助けてくれました。

No.132:シチリア旅行 (2018年01月31日)

 今回の旅のハイライトはパルレモの王宮内パラティーナ礼拝堂でした。多くの教会や礼拝堂を見てきましたが、これほど美しい礼拝堂は初めてです。シチリアが地中海で最も財力ある国に発展したノイマン王朝時代(12世紀)に造られました。黄金色、青、赤、緑のモザイクが壁一面を覆い、900年近くも経つのに、色褪せることなく鮮やかに美しく輝いています。

No.128:ポルトガル旅行 (2017年09月30日)

 季節の良いときに旅行に行きたい、と勤務先のボスに頼み込み、秋のポルトガル旅行が実現しました。直行便のないポルトガルは15時間ほど、飛行機の狭い座席で長時間過ごすこと、キツイ時差ぼけになることで、歳をとったら厳しく、ヨーロッパにあと何回行けるかわからない、と訴えたのです。

No.120:2度目のミラノ、ヴェネチア (2017年01月31日)

 2度目のミラノ・ヴェネチアは充実した旅でした。14年前に初めて訪れたときは、ツアーだったので、効率は良いものの、次から次へと味わう間もなく見物していった感がありましたが、今回は全て自由行動、思うところをゆっくり旅することができました。まさに「2度目の旅は断然楽しい!」です。

No.114:驚きが多かったホーチミン (2016年07月31日)

 4泊5日で滞在したベトナム・ホーチミン、驚くことが多い街でした。バイクの多さとマナーの悪さにはびっくりです。歩道を走る、歩行者専用の横断歩道を青信号で渡っている前後すれすれを横切る、左折と対向右折が無秩序に入り乱れる、あちこちでクラクションが鳴り響く、といった具合、車のマナーも似たようなものです。それに、どこへ行ってもたくさんのバイクが走っており、排気ガスが気になります。

No.108:ベネルクス3国の旅 (2016年01月31日)

 「本当に行くの?」「無事の帰国を祈る!」といった言葉に見送られて出かけたブリュッセル、新年の3日まで開いているクリスマスマーケットをはじめとして街中が大変な賑わい、テロに対する人々の懸念は全く感じられません。

No.100:何事も大きく頑丈そうなロシアでした (2015年05月31日)

 ゴールデンウィークでの海外旅行は2回目、1回目は37年前の初めてのヨーロッパでした。それから何回も出かけているヨーロッパですが、今回はフィンランドのヘルシンキ、エストニアのタリン、ロシアのサンクトペテルブルク、と初めての国ばかりです。映画「かもめ食堂」の舞台となったヘルシンキを観光し、ムーミンのマグカップを購入、街中が中世のテーマパークのようなタリンを楽しみました。サンクトペテルブルク、旧レニングラードはヘルシンキから高速鉄道で行けることが分かり、急きょ計画に組込み、世界三大美術館であるエルミタージュ美術館や美しいエカテリーナ宮殿を見物しました。


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