事実を述べるだけの文章では商品価値は上らない、自分の考えを入れた文章こそ商品価値を上げる、つまり自分の立ち位置によって商品価値が上る。「日経エンタテイメント」発行人品田英雄(しなだ ひでお:1957年東京都出身)氏は「商品価値」といったビジネス用語を使い、受講者によるロールプレイングなども取り入れたユニークな講座を展開した。「この講座が終わった時に、受講者みんなが『明日から頑張ろう』という気持ちになるようにしたい」と、話す内容ではなく、話す目的を最初に述べたのも印象的で、編集者であると同時に大きな組織で働くビジネスマンといった感じだ。
「アエラ」と「女性セブン」を取り出して、どちらの表紙が「おしゃれ」かを受講者に質問し、なぜ「おしゃれ」なのかを更に訊いた。写真や文字の数、大きさ、色使いなどを具体的に、できれば定量的に回答することが求められる。そうしないと「おしゃれ」にするための具体的な指示ができないからだ。また、写真撮影を想定したロールプレインでもカメラマンやモデルに対する具体的な指示が求められる。「知性」を感じる写真を狙う場合、目線はカメラ目線か遠くを見る目線か、全身か上半身のみか、立つのか座るのか、スーツかカジュアルか、バックは、などなど。「おしゃれ」感とか「知性」感といったあやふやなものを、見える形で表現するのは難しい。とにかくやってみる、そして経験を積むことの大切さを感じた質問やロールプレインだった。
ヒットメーカーの共通点は「情熱」「センス」「テクニック」が人よりも高く優れていることだそうだ。エンターテイメントの世界だけでなく、スポーツの世界でも、編集者・ライターの世界でも同様だという。日々の努力や訓練がこの3つの要素を高め、優れたものにしていくのだろう。一流のスポーツ選手をみるとそのことがよく分かる。
常に教室内を移動し、受講者を巻き込みながら進める品田氏の講座は分かりやすく、楽しいものだった。自分の両手をがっちり組んだときに、左右どちらの親指が上にあるかで右脳(本能/芸術/直感の処理)人間か左脳(言語/論理/計算の処理)人間かが分かるそうだ。私は右手親指が上で、どうやら左脳人間らしい。花田編集長と同じだったので嬉しかった。