山田ズーニー氏文章力ワークショップ2回目だ。1回目(11月12日)が「自分の想いを表現する」で、今回は「一人の人に伝える」がテーマとなる。次回「多くの人に伝える」で1つのコースが完了する。雪のためか1回目の2/3程度の参加者となったが、今回も「良いワークショップでした」という山田氏の評価をいただいた。多くの高校生の小論文を山田氏が読んで感じたのは「自分の声をだしていない」「他者がいない(自分の中にある世界が全て。自分の外にある世界との係わり合いがない。他者に伝わらない)」ということだった。前者が1回目の、後者が今回および次回のワークショップのテーマとなる。
山田氏は7つの『伝わる要件』を挙げている。
(1)意見:答えのない問題に自分自身が出した答え。伝えたいこと。
(2)論拠:その根拠・理由
(3)目指す結果:相手にどう思って欲しいか。
(4)論点(問い):論点(問い)が意見(答え)を引き出す
(5)自分のメディア力:自分がどう見られているか
(6)相手にとっての意味:自分にとって意味のないものを人は読まない
(7)根本思想:自分の根っこにある想い
伝わる伝わらないの境は、「根本思想」と言葉が一致するか否か、つまり嘘のない言葉か否かだ。この「根本思想」が相手の心を動かすものでなければ、いくら言葉をつくしても空回りするだけということになる。小さな共感(そうそう!)、納得(なるほど!)、発見(へぇー!)なども相手の心を動かすためには必要なことだ。
ワークショップでは、自分の伝えたいこと(「意見」)を決め、その「論点」(問い)を2人ペアで整理した。この整理の段階で、自分では気がつかなかった新鮮な「論点」が見つかり、より深みのある「意見」とすることができた。自分の「意見」に疑問を投げかけてくれる人の存在がいかに大切かを実感したワークショップだった。
一人に向けたメッセージの方が、マスに向けたメッセージよりも強いときがある。読者からのメールに対する山田氏の返信メールを編集者が読み、「これ、いいですね」と言われることがあるそうだ。世界中で愛されている『ピーターラビットのおはなし』は著者のビアトリクス・ポター(Beatrix Potter, 1866-1943)が、病気で寝ていた元家庭教師の息子ノエルを慰めるために書いた絵入りの手紙がもとになっているという。一人に伝わる、それが多くの人に伝わる基本中の基本と言えるのだろう。