「おにいちゃん、おにいちゃん、、、、」と叫びとも泣き声ともとれる悲痛な響きが、マンション廊下側の少し開いた窓から聞こえます。お隣玄関ドアのところからのようです。男2人兄弟、新学期初日で学校に行く小1の兄を、3歳下の弟が引き留めようとしている様子です。夏休みでずっと一緒だったおにいちゃんが出かけるので、寂しかったのでしょう。
兄弟仲がとても良さそうで、以前にも、おにいちゃんが「ただいま」と元気な大きな声で帰ってくると、間髪を入れずに「ご苦労様」と負けずに大きな声で弟が玄関口で出迎えていました。面倒見の良いおにいちゃんと、それを慕う弟、といった構図が想像できます。
友人の2人息子もとても仲が良く、2人とも独身だった頃は一緒にあちこちに海外旅行をしていました。旅行、特に一緒に行動せざるを得ない海外は、仲が良くないと何回も行く、ということにはなりません。兄弟も様々ですが、仲が良い兄弟はより豊かな人生を送ることでしょう。
私には兄が2人いましたが、お隣の弟のような経験はありません。特に、昨年亡くなった6歳年上の長兄を慕ったり頼りにしたことは無かったように思います。先日、兄弟3人でお彼岸のお墓参りに行き、帰りに食事をしたとき、長兄に兄貴らしいことをしてもらった覚えがない、と次兄が言っていました。全く無かったということはないでしょうが、まあ、そういう長兄だったな、とは思います。常に、人との距離を保ち、身構え、緊張していたような長兄だった気がします。
兄弟仲は普通で、悪い、ということではなかったのですが、もっと仲良しであれば、お互いにもっと豊かな人生だったかもしれません。弟たちの面倒を見たり、弟たちから慕われたりしていたら、人との距離をうまく取れるようになって、あれほど身構えることもなかったのではないか、と思ったりもしています。
長兄は勉強や仕事が全てで、人などにはあまり興味がなかったのです。友人もほとんどなく、友人と飲みに行った、なんて聞いたことがない、と嫁さんが言っていました。このため、勉強や仕事では良い刺激、良きライバルとなりました。それが長兄が兄弟にしてくれた「兄貴らしいこと」だったのかもしれません。