幻冬舎が初めてだす雑誌「Goethe(ゲーテ)」の編集長額田久徳(ぬかだ ひさのり:1962年生まれ)氏の講座は実践的な内容だった。また、一部上場の社長秘書から出版社の編集者者に転職した若い女性を連れてきて、転職や編集での実体験を語らせるなど、身近で分かりやすい内容でもあった。ワールドフォトプレス広告部から同社編集部にスカウトされ、更に幻冬舎にスカウトされた氏は「どんな仕事でもやりたいことがやれるチャンスがある」と言う。どんな仕事にも真摯に取り組んできた結果なのだろう。この講座でもそんな姿勢を強く感じた。
編集者として必要なことは、1つのことに突出していること、相手の言うことを面白がる「褒め殺し」ができること、正直であることの演出ができること、非常識なクリエータたちと常識の出版人の両方の世界に入り込める「巫女さん」のような役割をはたせること、毎日書店に行くこと、食事が速いこと、体力があること、など本音の話を多く聞くことができた。
雑誌「ウォッチアゴーゴー」の編集者だったときに、かねてから話を聞きたかった幻冬舎見城徹氏との対談を「時計」に絡めて企画した。時計の話はそこそこに雑誌論などで話が弾み、それがきっかけとなり幻冬舎初の雑誌を創刊する役割がまわってくる。こうして人とつながっていく額田氏の人脈作りを支えているのは「純粋な友情はない。現実は貸し借りの世界」という考え方かもしれない。今回の講座も、『TOKYO★1週間』編集長奈良原敦子氏の突然の講師キャンセルで、2日前の木曜日に花田編集長から電話で依頼されたという。来月25日発売の「Goethe(ゲーテ)」創刊号の編集に追われ、忙しいなかでの依頼だったが「花田さんでは断れない」と無理を押しての講座となった。こういったことも編集者に必要な資質なのだろう。