道路公団民営化委員会委員として注目されたノンフィクション作家猪瀬直樹(いのせ なおき:1946年長野県生まれ)氏の講座は道路公団民営化の成果発表会となった。「七人の侍」と期待されていた7人の民営化委員のうちの5人が「民営化とはいえず、新しい特殊法人が増えただけ」(川本裕子氏)などと発言して辞任する異常事態のなかで踏みとどまった猪瀬氏が民営化の成果を主張する姿はなぜか寂しげに見えた。
先週の講座で「猪瀬は急に変っちゃった」と話していた矢崎氏がもし委員だったら辞任していたに違いないと考えると、残間氏が『それでいいのか蕎麦打ち男』で書いていた「団塊の世代が『おめでたい』と言われるのは、ものごとを突きつけるべきときに突きつけず、あいまいな笑顔でやり過ごしてしまうということが多いからなのではないかと思う。そうであってもそうじゃなくても大差ないと思っている...」という部分を思い出した。
講座の冒頭で「59歳になるが若く見える」とご自分でおっしゃっていたが、同世代のターザン山本氏も「生きている限り青春」と『若さ』にこだわっていたように思う。頑張ればよりよい明日を得ることができた高度経済成長期を若い頃に経験した団塊の世代にとって、『若さ』には特別の想いがあるのかも知れない。タバコが不味ことを風邪の前兆と考えて注意する猪瀬氏は20年間仕事を休んだことがないという。頑張ることが自慢の団塊の世代の一人なのだろうか。子供の頃にアメリカ映画で見たタイプライターの格好よさにあこがれ、ワープロが発売されるとすぐ飛びつくなど、アメリカ好き、新しもの好きといった団塊の世代の特徴をしっかり持っているようにも思えた。