セミロングのヘアスタイル、黒を基調とした服装で胸には大きな白いコサージュ、きびきびした動作、よどみのない話し方、理路整然とした濃い話、などで新鮮な印象を強く受けた講座だった。文章表現/コミュニケーション・インストラクター山田ズーニー(やまだ ずーにー:1961年岡山県生まれ)氏は執筆、講演、大学での講義、企業研修、教材開発、授業企画、TV/ラジオ講座などの活動を通して、人の「考える力・表現する力」を活かし、伸ばす教育サポートを実践している。対象者は、中学生から高齢者、文章指導をする教授、プロライターまで幅広い。山田氏がインターネット上で掲載している「おとなの小論文」は5年に及ぶ人気コラムだ。最近は、今回のような生徒参加型ワークショップに最も力を入れている。
一人一人が自分自身の言葉で自分自身を語るという、一見なんともないようなことだが実際には難しい、その難しさを教え、その難しさを解決する糸口を教えてくれる山田氏のワークショップ参加は貴重な経験となった。おそらく山田氏ご自身からでないと得ることができない経験だろう。人に感動や共感を与えるためには借り物ではない自分自身の言葉が必要で、そのための最初の訓練が今回の「自分の想いを表現する」だ。予定を1時間延長し5時間のワークショップとなった。
自分の『意見』は自分の持つ『問い』に対する『答え』だ。「ああ、俺はダメだ」という『意見』の人は「自分という人間は良いかダメか?」という『問い』を持っていることになる。このような「YesかNoか?」といった『問い』では同道めぐりの狭い『答え』しか生まれない。広がりのある『答え』を生むためには、自分、社会、世界、過去、現在、未来と幅広い範囲を考えての『良い問い』が必要だ。『良い問い』というスコップを使って自分自身の心の中を何回も掘り下げることによって自分自身を発掘し表現する、それが今回のワークショップでの課題だった。
今回のワークショップで発表された受講者全員の自己紹介は、借り物ではない自分自身の言葉で語られ、共感できるものが多かった。みんなとのつながりが少しできたように感じる。山田氏は「いままででも屈指の、すばらしいものでした」と感想を述べ、花田編集長が「(山田氏の)感想はお世辞ではない。第1期生の時は散々の評価だった」と補足した。私個人としてはとても満足できる出来ではなかったが、自分の心に忠実で真直ぐな山田氏の言葉だけに嬉しかった。