雪のゲレンデを滑る多くの若者をリフトから眺めながら、おれもまだまだ若い、と一人満足していました。ガーラ湯沢、ここは新幹線直結のスキー場で、東京から1時間半、日帰りでスキーが長時間楽しめ、駅には宅配店や大きなレンタル店があって、手ぶらで遊びに来れます。新幹線に乗り込む人々は、スキー板も持たず、街角で出会う人々の姿とあまり変わりません。私もその一人でした。
入社してから10年ぐらいは、シーズンになると毎月のようにスキーに出かけました。夜行列車で行って、夜行列車で帰る、そんなときもあり、若いからこそできたのだと今更ながらに思います。ゲレンデや宿でみんなとはしゃぐ、そこには遊ぶお金と仲間を得た社会人の楽しさがありました。
そんな若いときを思いながら、一人でスキーに出かけたのです。一緒にはしゃぐ仲間はいないものの、銀世界のなかでの滑降は「楽しい」の一言でした。短い初心者コースで足慣らしをしてから、長い初心者コース、そして中級者コースへと移っていきます。なにしろ25年ぶりですから慎重です。最初は八の字に開いていたスキーも、しだいにパラレルとなり、まあかなり開き気味のパラレルではありますが、エッジを外して方向転換する感どころも取り戻しました。中級コースの急斜面でのスピード感、流れる足元、身体で感じる滑降面の凹凸、広がる雪山の景色、それは快感そのものです。
天候は軽い雪でした。少し積もった新雪を滑る気分の良さは格別で、4人乗りリフトで隣り合わせた人たちの会話、「いい雪だ。北海道の雪と変わらないよ」にうなづきながら、久しぶりのスキーは当たりだった、と独り満足していました。午後の4時間半あまり、リフトが止まるぎりぎりまで、2回のトイレ休憩を除いて滑りっぱなしで、滑降してリフトに乗る間隔が約15分なので、16回以上リフトに乗りました。「今日は1回だけだったよ」という若者の会話を帰り際に聞きました。どうやら1回リフトに乗っただけで、あとは休憩所で休んでいたようで、思わず「おれもまだまだ元気だ」と微笑んだのです。
平日だったので、仕事の電話が2回入りました。仕事中の仲間とスキー場から仕事の話をするなど初めてです。定年になったからこそでしょう。おかげでその日は帰宅後深夜2時頃まで仕事となりましたが、遊びあり、仕事ありの充実した一日でした。その後、筋肉痛もたいしたことなく、翌々日とその次の日、会社から家までの18kmほどを歩いたりもしています。日頃歩いているたまものでしょう。
大学時代の友人が「スキーに行きたい」と独り言のように話していたし、近江八幡在住の友人はスキー旅行を楽しんだことをミクシイ日記に書いています。スキー人気は下降の一途をたどり、スキー場来場者はピーク時の3,4割に落ち込んでいるそうですが、私や友人たちには、若いころに楽しんだスキーへの特別な思いがあるようです。
ところで友人のミクシイ日記ですが、スキー宿と思われるところで女性2人と楽しそうにしている写真がありました。奥さんに先立たれての独身であることをいいことに、楽しい青春真っ只中なのでしょうか。温泉にも入ってゆっくりしたようで、独りで、ただひたすら滑って帰ってきただけの私とはえらい違いです。若いと思っていた私、でもそれ以上に若い友人、これはもう脱帽するしかありません。