「え!こんな細い道」、住宅街からいきなり、人ひとりがやっと通れる細い山道のような上り坂に出たのです。ハンディGPS機に登録した徒歩ルートによるとここを登ることになります。
少し不安を抱きながら登ると、左が草木の茂る斜面、右が畑といった丘の中腹を進む細道で、さらに進むと下りとなり住宅街に入りました。丘を越えるための正しいルートだったのです。道を1mも外れようものなら、画面上の現在位置が登録ルートから外れる、GPSが正確に誘導してくれます。このGPS機さえあれば全国どんな道でも迷わずに歩ける、と確信しました。
このハイテク機器、先月の静岡から京都までの歩きで悩まされた排気ガスへの対策として今月購入しました。排気ガスを避けるためには車の通らない細めの道を歩けばよいのですが、かさばる詳細地図が必要な上、道の確認も難しく迷いがちとなり、どうしても車の多い幹線道路に頼ってしまいます。しかしこのGPS機があればどんな細い道でも間違うことなく進むことができるのです。4万3千3百円とちょっと高めですが、江戸時代のように京都まで12日から15日で歩こうとしているわたくしには強力な助っ人です。江戸時代にはないハイテク機器ですが、排気ガスのない江戸時代であれば必要もなく、なにやら複雑な気持ちではありますが。
細い道の選定は、これまた優れモノのグーグルマップサイトを使います。出発点と到着点を指定すると、最適な歩行ルートを検索してくれます。先の丘越えの細道は、自宅から友人宅までを検索した結果の約10kmルートの一部でした。エリアによってはエレベータを通る最短ルートや、どの信号で横断すべきかといったことまで示してくれます。最適ルートに幹線道路が入ってくる場合には、グーグルマップ画面上を手作業で変更します。このルートデータをGPS機にダウンロードし、歩きながらルートと現在位置を確認して進むのです。
購入前にネットで機能を確認しようとしましたが、詳細が分かりません。京都までの詳細ルート全データを格納できるのか、GPS機に内蔵できる2万5千分の1の地図にない道でもルートとして登録できるのか、これができないとわたくしには役に立たないのです。販売店に電話すると、女性の方が的確に答えてくれました。ルートデータは1万点プロットまで格納可能、地図とは無関係に自由にルート設定可能、鉛筆で絵を描くように、とのこと。京都までは約500km、1万点あれば50mごとのプロットでルート表現ができので十分な精度だし、地図にない道でもルートとして登録できるのであればどんな細道でも選ぶことができます。
問い合わせたのは立川にあるGPS機器専門店ベルク、信頼できそうな店なので、電話の後にすぐ買いに出かけました。1時間ぐらいで到着すると、さほど大きな店ではなく、電話で答えてくれた若い女性が一人で対応しています。先程電話したものですが、と伝えると、日本橋から三条大橋までは3千7百ポイントほどですから登録可能です、と即座に教えてくれました。電話の後に調べてくれたのです。さらにいくつか尋ねましたが、どんな細かいことでも即座に答えが返ってくるし、関連した注意事項も教えてくれる、「詳しいんですね」と感心すると、「よくご存じのお客様からのご質問で鍛えられていますから」とのことでした。
若い人の、その熱心な姿に感銘すら受けました。GPS機のプロともいえる知識、その姿勢や意欲、なにかとてもすがすがしい気分です。気持ちの良い機器購入となりました。丘越えの細道でその有用性が確認できたいま、来年の京都までの歩き旅が楽しみとなっています。