「B級グルメを楽しんできます」、台北行便への搭乗待ちで妻が友人に宛てたメールです。友人からは「いやいや、A級で!」との返信がありました。9回目の台湾、今回は台南に初めて行きます。台南は「食の都」、しかもいつもは勤務先事務所のボスとの食事が多いのですが、今回は6泊7日のうちの2回だけ、あとは妻と二人だけで心置きなくB級グルメ食べ歩きができるのです。とても楽しみ、嬉々として飛行機に乗り込みました。
台南は、何回も訪れている台北とはちょっと違うな、という印象でした。味自慢の大阪では「大阪は、金を出さずにおいしいものがある。京都は、金を出せばおいしいものがある。東京は、金を出してもおいしいものがない」というジョークが受けるそうですが、台南もそんな大阪に似ているようです。街のいたるところに食事処があり、かつ賑わっていて、食べることへの強いこだわりを感じるのです。
台湾名物「夜市」、たくさんの屋台が出て、たくさんの人で賑わいます。日本のようにイベントのある日だけ、ということではなく、日常的にあって、人々の暮らしの一部になっている感があります。そんな屋台から出世して店舗を構える、それは人々によって時間をかけて厳選された味であり、まさにB級グルメの覇者、そんな店は間違いなく美味でした。
台南の「赤?(せきかん)担仔麺」、店名ともなっているタンツー麺が美味しい店、離婚後女手1つで子育てをしながら開いた屋台が評判となり店舗を構えたとのこと、タンツー麺はもちろん、牡蠣のスープも絶品でした。「集品蝦仁飯」のエビ飯や「金得春捲」の生春巻など、提供料理が店名というのもいかにも屋台を連想させます。いずれも最高のB級グルメでした。
ところで、ボスにご馳走になった2回は、政治家や芸能人が御用達という台南伝統料理の老舗名店と、世界の首相・皇室・VIPをもてなす最高級の会員制レストランでした。食材はよく分からないものもありますが、とにかく美味、お腹がいっぱいでも、残さずつい食べてしまいます。たくさん出された料理、それぞれの全てを平らげました。B級グルメだけでなく、友人が言う「A級」も大いに堪能することができたのです。
台南駅前でバス待ちをしているときに日本語で話しかけてきたお年寄、昭和3年(1928年)生まれで、生まれたときは日本人、日本語で教育を受けた、とおっしゃっていました。同じバスに乗り、同じバス停で降りての別れ際、どこに行かれるのですか、と尋ねると、饅頭を買いに行く、とのことでした。しっかり歩く後姿を見ながら、美味しいものを食べるためにバスで出かける、だから更に元気になるんだ、と思ったりしています。食いしん坊は元気で長生き、なのかもしれません。