今年は静岡から京都までを8日間かけて334km歩きました。自宅から静岡までを4日間で168km歩いた昨年のほぼ倍となります。来年はいよいよ自宅から京都までを一気に歩くことができそうです。
ただひたすら歩くだけの旅、途中の名所や名産を楽しむこともなく、京都に到着しても数時間後には東京行の新幹線に乗り込む旅、それでも心ウキウキ、この日のために毎日歩いてきたという思いだけでなく、やはり旅に出るという解放感、楽しみがあります。京都の三条大橋では友人夫妻が出迎えてくれ、達筆で大きく書かれた「祝 東海道完歩」の友人手作りの幕とともに写真を撮りました。少し恥ずかしい思いでしたが、出来上がった写真を見ると何か誇らしい気持ちです。「(歩くのが)いやにならなかった?」と訊かれましたが、そんなことは全くありませんでした。自分の足だけで京都まで行く、それが目的である以上は辛いときでも嫌になることなどありません。辛いけど楽しい、そんなスポーツ感覚のある旅といえるかもしれません。
来年からの課題も見えてきました。最大の課題は足裏のマメです。5日目でしたが、73kmの歩きとなりました。翌日の天気予報が雨だったので、出来るだけ移動して翌日ゆっくりしようと張り切ったのです。これがマメのひとつの原因と考えています。翌日の雨の中では14.2km、軽い歩きでしたが雨のため靴がずぶ濡れ、濡れた足のままで4時間弱歩いたのもマメの原因かもしれません。翌々日の7日目の午後になって足裏に痛みを感じ、見るとマメです。前日洗った靴の紐がほどけたままで歩いていたのが直接の原因とも考えられます。翌8日目は最終日だったので何とか歩きましたが、来年は12日以上あり、マメができたらおそらく途中で帰ってくることになるでしょう。油断せず、歩く時の靴のチェック、歩いた後の足のケア、そしてなによりも無理をしない、あまりの長距離や雨での歩きを避ける大切さをあらためて思い知りました。
車の排気ガスも大きな課題です。東海道の国道1号と伊勢街道の国道23号が主なルートとなりましたが、時間帯によっては車が途切れることがなく、排気ガスの中を長時間歩くこととなります。出来るだけ小さな道をと思いながらも準備不足のため安易なルートとなってしまうのです。旧東海道にもときどき入りましたが、車は少なく、人々のぬくもりや歴史を感じることもできて楽しい歩きでした。次回は可能な限り旧東海道を歩こうと決めています。日数もかけて。
江戸時代の京から江戸への約125里の旅は12日から15日と認識していましたが、日経朝刊の連載小説「韃靼(だったん)の馬」(辻原登著)によると、順調にいけば16日、天候不順などがあると18日ほど、とあります。これは李氏朝鮮の日本使節団が移動する場合のことですが、集団で移動するこのくらいのペースがよさそうです。来年はもう少し楽しい旅としたいものです。
<江戸時代の旅体験(静岡から京都)にもう少し写真があります。ご覧ください。>
*参考:日経朝刊の連載小説「韃靼(だったん)の馬」(辻原登著)2010年4月24日、25日掲載より抜粋
洪はさらにたずねた。
「私たちは船で淀川を遡(さかのぼ)って京へ向かいます。京から江戸まで約125里と聞いておりますが、江戸に着くのは何日後になるでしょうか?」
兵藤は瞬きをひとつして答えた。
「はい。仮に1日、8.2里の速度で進むといたします。朝辰(たつ)の刻五つ(午前8時)に出発して4時間歩き、午(うま)九つ(正午)から2時間休憩して、再び4時間歩いて酉(とり)の刻六つ(午後6時)に宿に入るとして、順調にゆけば、京を発って16日目の朝巳(み)の刻(午前10時)前に、品川宿に着きますでしょう。もし天候不順のために、1日半分の行程、つまり4.1里しか進めない日が5日間あるとすると、18日目の申(さる)の刻七つ(午後4時)前には同じく品川宿に到着します」