「団塊格差」(三浦展著、文春新書)を読んで両親への感謝の気持ちが更に強くなりました。団塊世代の大学卒業者は22%だそうです。文部科学省「2006年学校基本調査報告」では、私が大学進学した1965年の高等教育機関(大学・短大・専門学校)への進学率は18%程度で、現在の76.2%(2006年)とは進学状況に大きな違いがあったのです。兄2人が大学に進学しており、それを当たり前のように考えていましたが、世間一般以上の両親の努力があったことをあらためて知りました。
息子3人全員を大学に進学させたときに「いったいどこにそんなお金があるの」と同じような暮らしぶりの近所仲間から言われたそうです。仕事や家事の目的は子育て、自分たちのお金や時間は子供たちのために使う、そんな子供一筋の両親だったと思います。父は10年前に他界し、母は90歳で健在ですが、1年前に脳内出血で倒れてからは身体の自由があまりきかなくなっており、記憶力や思考力もかなり低下しています。それでも気になるのは子供たちのことのようで、横でうたた寝している私に気がつくと、不自由な身体にもかかわらず自分の布団を掛けてくれたりします。「(子供たちを育てるのが)大変だなんて一度も思わなかったよ。楽しんで育てたんだよ」とも言います。
「団塊格差」では「団塊世代で定年後比較的裕福な人は27%」(注1)と分析しています。私の兄2人の世代も団塊世代に近いので同じような%でしょう。そうであれば、両親が育てた息子3人全員が各世代の比較的裕福な27%に入るのです。裕福といった実感は私にはありませんし、このデータが実態を正確に表現しているとは思いませんが、3人全員が少なくとも平均以上であることは推測できます。両親からもらった教育機会や、体力、気力が平均以上のものだったということなのでしょう。もし「素晴らしい両親」というデータがあったならば、上位27%に入るはずの誇るべき両親なのです。
「団塊格差」で浮き彫りになった格差(注2)は、還暦後の暮らしぶりが様々に枝分かれすることを予感させます。「60前はみんな同じようだったが、60を過ぎると様々な暮らしぶりに分かれる」と65歳をすぎた従兄弟が実感を込めて話してくれました。これからが本当の自分、裸の自分が試される時期なのかもしれません。そんなとき、人生の選択や方向付けで影響を受けてきた両親の生き様や考え方は大きな拠りどころとなるでしょう。誇るべき両親であれば、その拠りどころは確たるもののはずです。
注1:「下流社会」の著者三浦展氏の株式会社カルチャースタディーズ研究所が文藝春秋の協力を得て行った「団塊世代2000人調査」(2006年3月、1947年1月ー1949年12月生れの男女2,156人(有効回答数)にインターネット調査)結果を分析した氏の著書「団塊格差」によると、夫婦の貯蓄1,500万以上、退職金予定2,000万円以上、遺産相続予定1,000万円以上で3つとも該当する人は男性の7.2%、2つに該当する人が19.3%と合わせて26.5%、いづれにも該当しない人は43.2%となっています。氏は2つ以上に該当する人26.5%を「定年後比較的裕福」としています。
今回のサンプルは大卒以上54%、中卒2%と、団塊世代の実態である大卒以上22%、中卒30%以上とはかなりかけ離れています。しかもインターネットアンケートということもあって、団塊世代の実態にどれだけ迫れているかは不明です。しかし大まかな参考にはなりそうです。
注2:「団塊格差」で浮き彫りとなった団塊世代の男性間格差は、夫婦の貯蓄2,000万以上19%/500万未満39%、退職金予定2,000万以上28%/500万未満47%、遺産相続予定2,000万以上17%/なし38%となっています。その他に「子供の自立」「人生の満足度」などについても格差という観点から分析しています。