「抜歯になると思います」と歯医者さんに言われて慌てました。2年ほど前に抜歯して、自分自身の歯がいかに大切かを知ったからです。歯ぐきに白い点が2つでき、レントゲンを撮ると、かなり昔に神経を抜いた歯の根元が化膿し、骨を溶かし、歯ぐきを突き抜けて細いトンネルができていました。セラミックの被せ物を取り除いて、神経を抜いた跡の根元内側の空洞をきれいにして、殺菌し、1週間様子を見ましたが、1つは消えたものの、もう1つが消えません。
こうなると、歯の根元外側から治療する必要があるが、化膿が消えないので、おそらく歯自体が損傷しており抜歯が必要となるだろう、と言われました。抜歯などとんでもない。前回の抜歯、インプラントにすればいいや、と軽く同意してしまいましたが、その後、抜歯箇所が狭いのでインプラントはリスクが大きく、ブリッジや差し歯は健康な両隣の歯を弱め、ドミノ倒しのように歯が抜けていくリスクがあることを知り、悔やんでも悔やみ切れない思いをしているのです。
本当に抜歯しかないのか、別の歯科医に意見を求めました。1人目は、「二度と入れ歯や差し歯を入れたくない」人のために、とホームページにあったので行ってみました。これがどうみてもひどい歯科医、助手とのコミュニケーションが悪く、治療中に怒鳴るし、狭い治療室には所狭しと物が置いてあり、無造作に置かれた治療器具に清潔感はなく、私の胸に掛けられたタオルには血が付いています。「頼れる歯科医9人」という本で紹介されている1人なのですが、とても頼れる医者ではありません。後でネットを見ると、この出版社はその多くが自主出版らしいのです。いわいる宣伝本で、ある本では薬事法違反で告訴されています。
2人目は、「『削る・抜く』から『守る』へ」とホームページにあったので行きました。スウェーデンでの歯のケア方式の素晴らしさなどを丁寧に説明、このため診察は1時間半近くに、週1回来ているアルバイト先生で、時間給だからなのでしょうか、たまたま次の患者がいなかったのでしょうか、時間をあまり気にせずにべらべらしゃべる先生を信頼することはできませんでした。それに、前回抜歯した奥歯について、狭い場所へのインプラントであれば埋め込む土台を長めにすればよい、と自信たっぷりでしたが、神経などが近くを通っている奥歯での長めの土台がかなり危険であることを後から知りました。信頼できない、という直観は正しかったようです。
2人の歯医者ともに、根元の情況によっては抜歯、そうしないと隣の歯にも影響する、という意見でした。それで、仕方なく今までの歯医者さんに3週間ぶりに行きました。すると先生が、あれ、良くなってますね、と。私にはよく分からないのですが、先生には分る様で、この状態であればもう少し様子を見ましょう、ということになったのです。それから5週間後、歯内側の処置をして新しい被せ物が完了したときには、細いトンネルはすっかり消え、骨と肉に戻っていました。
殺菌してから1週間すれば腫れは引く、という標準の人に対して、私の場合は1週間以上かかった、ということのようです。お伊勢さんへの歩き旅で疲れ、免疫力が極端に落ちていたために化膿し、殺菌してもなかなか腫れが引かなかったのではないかと推測しています。医者は、それぞれの個体差や生活状況までは分からず、平均値や経験値で判断せざるを得ません。
2年ほど前の抜歯では、被せ物がぐらついたので診てもらったとき、様子を見ましょうと言われ、その後の食事で歯本体が折れ抜歯となってしまいました。歯本体が折れる可能性に全く言及しなかった先生を、基本的には信用していません。今回もあのままだったらほぼ間違いなく「抜歯」の勢いでした。かといって他に良さそうな先生は見つかりません。お医者さんも所詮は人、判断ミスも当然あるわけですから、重要な決定は立止まって冷静になって熟考することが大切なのだと思います。自分のことは自分で守るしかないのです。