2月9日、アンコウ鍋でも食べに行こうかと北茨城の平潟に家内と車で出かけた。朝降っていた雪もあがり午後から快晴、夜は満天の星空となった。午前0時を回った頃に家内を民宿に残して撮影機材を担いで近くの海岸に出た。対岸の小名浜の街明りが美しい。さっそく撮影の準備にとりかかった。
撮影を始めて間もなくのことである。海岸通りを走って来たパトカーが近くに止まった。警官が2人降りて来てライトでこちらを照らしながら、
こんな所で何をしているのか、
どこから来たのか、
……、
どうもフード付のダウンジャケットを着て暗い海岸でごそごそとやっていたので不審者と思われたようだ。星空を撮影していることや泊まっている民宿の名前などいろいろと説明して何とか理解してもらった。
ライトで照らされそれまで撮った写真は全てNG、緊張のあまり舌鼓を打ったアンコウ鍋や海鮮料理の余韻はどこかにすっかり消えてしまった。
ちょうどその日、2月10日に隣のいわき市で目黒の殺人事件の容疑者が逮捕されたことを新聞で読んだ。特別警戒中だったのかもしれない。今思い出すと滑稽だが、警官からいろいろと聞かれて思わず口ごもったり、あの時は内心穏やかでなかった。
この一枚の写真には自分にしか分らない苦い思い出も写っている。
撮影データ:2011/02/10 am4:40,NikonD90,Fisheye10.5mm,ISO1000,露出120秒20枚をPhotoshopEL8にて比較明合成