お金の使い方は人それぞれです。年金暮らしの知人は海外に一人で遊びに行きます。一人でお金を使って、との奥さんの不満をよそに、お金は使うためにある、と言いながらいそいそと出かけます。私にはなかなかできません。一緒に喜べる人がいないと楽しくないのです。妻や友人夫妻と旅行したり、食事をしたり、たまには若い人にご馳走したり、とかで、一緒に楽しめることにお金を使います。もっとも、その方は誰とでも仲良くなれるので、旅先で知合った人と一緒に楽しむということなのかもしれません。
入院中の別の知人は、高額の差額ベッド代を払って個室で1年以上過ごしています。1日2万5千円の自費、そんなお金の使い方も私にはできません。他の患者さんと同じ部屋で寝起きすることが苦痛な方なので、それが生きたお金の使い方なのでしょう。私の場合は、かえって落ち着かず、生きたお金の使い方になりません。
端末代も月々料金も0円の携帯にしたとき、お金が絡むと頑張るのね、と妻に言われました。確かにそうです。そこが智恵の働かせどころ、結果が良ければ、達成感もあり、嬉しくもあります。お金に執着しているわけではありませんが、使い方には執着します。携帯0円のような芸当は、知人にはなかなかできないことでしょう。そもそも興味もないかもしれません。
お金の使い方にはその人の価値観が表れます。性格や個性と言えるかもしれません。映画フラガールで主演した蒼井優さんが、結婚の決め手は「金銭感覚が似ていること」と嬉しそうでしたが、価値観や性格が似ていれば、共感することも多く、楽しいことも多いことでしょう。
東大卒で大手IT企業に勤める30歳の男性は、1日分の栄養が摂れる粉末を水に溶かして3回に分けて飲み、それを日々の食事としているようです。「食事にお金を使うということは、いくらでうんこを買っているのかという話になる。”おいしい”と思う感情もあるが、限られた予算の中で、ひとときの感情のために使いたくはない」とのこと。食べることに強いこだわりと楽しさを求める我が事務所のボスに話してみると、他人のことだからとやかく言わないけど、早死にするね、と一刀両断でした。
世の中は様々な個性であふれていて、常識など吹き飛ばしている人もいるのです。でも、昔からの、多くの人たちの経験から出ている常識、そこからあまりにもかけ離れているのは、「早死にするね」というボスの言葉にあるように、危険も伴うということかもしれません。常識からあまりかけ離れないようにお金を使う必要があるのかもしれません。